世の中にはその分野で素晴らしい功績を残した人に授けられる「殿堂(Hall of Fame)」というのがありますが、ジャマイカが産んだ素晴らしい音楽にはまだ殿堂がありません。今日は、このレゲエの殿堂について業界関係者をインタビューしたというJamaica Gleanerの記事を訳しました。
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2年以上の間、レゲエの殿堂の設立について話し合われ、またこの案が持ち上がってから多くの音楽関係者や財力や地位的に力の持つレゲエ愛好者たちがサポートするために集まっている。しかしこのアイディアが出た当初から現在までの間、ほとんど何も進んでいないというのが正直なところなんだそう。
業界の内部関係者はこれに一言モノ申す!ついにジャマイカがお金を生むための時が来た、そしてこのアイディアを他の国が始める前に軌道に乗せなければ!と意気込んでいます。
Gleaner紙は、JaRIA(ジャマイカレゲエ協会)の経理担当者であるJunior Lincolnにインタビューを行なった。またそこで彼は、レゲエの殿堂の設立案はもうだいぶ前からあったことだと説明する。
「いいアイディアだと思うし、これはずっと前からあったことなんだ。レゲエは今や国際的な音楽になっているし、世界中の人々がこの音楽の産まれた場所を訪れるためにたくさんのお金を遣っている」
また彼はレゲエを産んだ国 - ジャマイカ - が世界に向けたアピールとして音楽ビジネスを十分に活用できていないと強調する。ジャマイカはこの国が産んだレゲエという音楽から利益を得てもいいはずだという。
「他の国はすでにレゲエ音楽から利益を得ることに成功している。だから彼らが自国でレゲエの殿堂を設立しようとする前に今、我々がやるべきだ。彼ら(他国)はレゲエからお金を生み出すことを知ってるし、製品を適切に市場に届ける方法をすでに見いだしている。ジャマイカは先を越される前にやらないといけない。」
業界のベテランであり、多くのアーティストと仕事をしてきたNeil Robertsonもレゲエの殿堂の設立に対して思いがある。ジャマイカが広い世界に向けた「ジャマイカ」というブランドを押し出すのに準備万端ではないということに異論はない、しかしながら他国がこのレゲエの殿堂のアイディアを持って行くのは違う、と考えている。
「2万人以上が集まるような世界中の音楽フェスに行くことがある - ジャマイカに興味のある人達ばかりがあつまるような - けどそこで『ジャマイカ』というブランドを十分にアピールできてないんだ。他の国が殿堂設立のアイディアを取ってしまうとは思わない、でもレゲエはやっぱりジャマイカのものだと思うし、だからジャマイカ政府がジャマイカとこのレゲエという音楽をプロモートするために投資すべきだと思うね」と語る。
また彼はこの殿堂ができれば、観光客にとってのいいアトラクションになる、という。そして国際的な音楽業界に対して、世界に通用する新しい音楽と才能がここにあるというメッセージを送ることができる。
しかし前出のLincolnはこれに対し違った視点を持つ。「新しいスタイルの音楽も大切だ、だがレゲエの殿堂は、音楽ビジネスに輝きを取り戻すことでジャマイカに貢献し、そしてレゲエの産まれた場所として再確認させるものだと思ってる。ジャマイカはレゲエを産んだ国としてリスペクトされているし、この場所で皆がいい音楽を作ってるんだ。ただ我々がもう少しやらなければいけないことがある」
またプロデューサーであるWinston "Niney" Holnessも意見する。
「我々はまだ未熟な部分がある。他のジャンルの音楽を見てみると、みんな殿堂がある。レゲエはそれらと同じくらい世界に広がってるのに、何故ないんだ?」
レゲエの殿堂とする場所をどこにするか、という質問におよぶと、様々な意見があがる。Nineyは観光客が集まる北海岸(オチョリオスやモンテゴベイがある)はすでに人が知っている場所で、お金を生むのに適している、そしてキングストンに関しては、人々はそれほど観光のアトラクションとしてキングストンを訪れたいと思ってない、という。
Lincolnはキングストンがいいと言う。キングストンはエンターテインメントのメッカであるし、政府もキングストンのダウンタウンを開発するのにかなりの投資をしている。そして歴史がある。そしてアーティストがブレイクするのはだいたいキングストンだし、この国の音楽業界が生まれたのはキングストンじゃないか。レゲエの殿堂にキングストンを選ばないのは必然的なことだと思うよ。
Robertsonは頭を悩ます。「キングストンにすることには賛成するよ、アーティスト、プロデューサー、そしてマネジャーたちのほとんどがここにいるからね。でも観光客を掴むために他のアトラクションも含めて考えるとモンティゴベイからオチョリオスがいいんだよね」
3者それぞれの意見があるが、共通しているのは、これらのプロジェクトの責任は業界と政府が共有すべきだということだ。
「政府が音楽業界に対して何かしてくれるとは思わない、しかしながら投資はしてくれると信じてるよ。プロジェクトはお金を生むビジネスであるから、エンターテイナーや業界の人達が自由に投資すべきだし、その利益は長い期間をにおいて皆に広がって行くだろう」
Nineyはまたこのプロジェクトの資金集めは皆で行なうべきだと言う。「政府だけでやるべきではないと思う。なぜなら今日のジャマイカの経済状況を見ている限り、絶対に具体化されないだろうからね。ちゃんと実現させたいと思うなら皆を巻き込むべきだ」
Robertsonは資金集めは、レゲエの殿堂の場所となるその地の人や企業に頼るべきだと言う。「もし殿堂がキングストンになるなら政府をしっかり巻き込むべきだ。逆に観光地になるなら、その時は観光客のアトラクションを提供する民間企業の投資を募ることができると思う。」
今回、インタビューに応じてくれた3人いずれも、hall of fameの選考には、エンターテイナー、プロデューサー、エンジニア、マネジャー、そしてレコードレーベルなど全体に渡り広くレゲエ音楽に大きな貢献をした人が選ばれるべきだ、と締めくくった。
記事原文:http://jamaica-gleaner.com/article/entertainment/20150921/industry-insiders-weigh-hall-fame-talks
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今までジャマイカ国内ではこの取り組みがあまり進んでいなかったけれど、他国、それもアメリカかイギリスでこの話が浮上し、「レゲエの殿堂を他の国でやられたら困る!」って感じで再燃したような気もしますね。
もちろんレゲエが生まれた国ですから、もっともっと大きな枠組みでレゲエを、そしてジャマイカを盛り上げることができるはずなのに、その投資が国内からでは足りない、というのが原因の一つです。(政府のレゲエに対する協力体制が弱いのもあるかもしれません)
少し話はずれますが、ジャマイカでは音楽に限らず農業や教育など様々な業種において資金や人材不足がプロジェクトの失敗の原因になることがあります。過去にもJICA(国際協力機構)を通じて日本政府がジャマイカの発展のために企業に対して協力/参画したプロジェクトがあるのですが、そのプロジェクト中はいい感じに進んでもそのプロジェクトが終わると同じように続けるだけの資金力が企業側になかったり、そこで働く人達の教育に投資できなかったり、様々な理由でせっかくの努力が台無しになってしまいました。そんなことも時々耳にします。
さて、検索してみると"Reggae Hall of Fame"というNGO団体があるそうで、Facebookにそのページがありました。(この団体と今回のインタビュアーの3人が一緒に活動しているのかは不明)
https://www.facebook.com/pages/Reggae-Hall-of-Fame
ただ、コンセプトは同じ、このレゲエという音楽そしてジャマイカを世界に広めた人達を称えたい、というのが目的です。(上に掲載した画像は、このNGO団体が主催したポスターコンテストに入賞した作品です)
レゲエができてだいたい50年、この間、表彰されていないたくさんの功労者がいます。第一回目はどんな人が表彰されるのか、それを考えるのも面白いですね。
Tings & Time Records
SHOP URL: http://tingsandtime.shop-pro.jp/
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